コツコツ健康「骨」コラムCOLUMN
骨折予防のための
栄養摂取とは

なぜ大人になっても
骨の栄養を摂るべきなのか
子供の頃、誰もが「骨を丈夫にするために小魚を食べなさい」「背が高くなるように牛乳を飲みなさい」と言われたことがあると思います。食べ物から摂る栄養が骨を強くしたり、骨の成長を助けたりすることは、皆さんご存知でしょう。骨には「体を支える屋台骨」「内臓や脳などの臓器を保護する」「カルシウム貯蔵庫」という3つの重要な役割があり、子供から大人まで、すべての人にとって骨は大切な器官なのです。

私たちの体は血液中のカルシウム濃度が下がると生命を維持できません。ですからカルシウム摂取が不足すると、骨に蓄えていたカルシウムを溶かし、血液中のカルシウムを維持しようとするのです。「カルシウムを摂らないと骨量が減る」「骨がスカスカになって弱くなる」と言われるのはこのためです。
また、骨は一度できたら完成、ではありません。破骨細胞による「骨吸収(骨をこわす働き)」と、骨芽細胞による「骨形成(骨をつくる働き)」を繰り返し、大人になっても骨は絶えず「吸収(こわす)」と「形成(つくる)」を繰り返します。正常な人の場合、このバランスが保たれているのですが、閉経・加齢などによりこのバランスが崩れ【吸収(こわす)>形成(つくる)】となると、骨粗しょう症を発症します。

骨粗しょう症は
“新たな生活習慣病”?
骨粗しょう症による椎体骨折は、呼吸機能低下や胃食道逆流症の原因となるだけでなく、生活の質や生存率の低下にも繋がります。さらに、新たな骨折発生のリスクを増加させるため、最初の骨折をいかに防ぐか、ひいてはいかに日頃から丈夫な骨づくりをしておくかが大切だと言えるでしょう。長年の食習慣や運動不足などにより徐々に症状が現れるという点では、骨粗しょう症は生活習慣病のひとつと捉えることもできるのではないでしょうか。

積極的に摂りたい
ビタミンK2
近年、ビタミンKは骨の健康維持に欠かせない栄養素であることが明らかになってきました。中でもビタミンK2は血中濃度が安定するため、ビタミンK1に比べより高い効果が見込めるとの論文が増えています。しかし、ビタミンKはまず肝臓において凝固因子の活性化に利用された後、骨で作用するため、骨では不足しやすくなります。ビタミンKの不足は骨折や骨粗しょう症のリスクを高めます。
ビタミンK1は緑の野菜、ビタミンK2は納豆などの発酵性のものに多く含まれます。日本人の食事摂取基準における目安量は、健康な人の摂取中央値を基準にしており、骨折予防効果を考慮したものではありません。骨のもとになる栄養を毎日しっかり補えるよう、食生活に気を配り骨折や骨粗しょう症を防ぐことが、末長く質の高い生活を続けるための鍵となるでしょう。


静岡県立総合病院 リサーチサポートセンター
臨床研究部⾧
田中 清 氏
京都大学医学研究科(内科学)修了。医学博士。高齢者におけるビタミン欠乏症・QOL調査、骨粗しょう症の臨床研究を主に研究。日本病態栄養学会誌編集委員長。日本栄養・食糧学会近畿支部前支部長、NPO法人京滋骨を守る会事務局長、日本人の食事摂取基準策定WG委員(2010・2015年版・2020年版)などを務める。