コツコツ健康「骨」コラムCOLUMN
成長期からの
骨づくりと食習慣
現代っ子に急増中の
「くる病」と「骨折」
近年、子供のくる病や骨折が増加していることをご存知でしょうか。くる病とは、骨がもろくなって変形や成長障害を引き起こす病気で、以前は戦後など極端に栄養状態が悪い時代にしばしば見られていたのですが、現代では日光に当たらない生活や、アレルギーのための食事制限により、骨づくりに必要なビタミンDが不足していることが主な原因と考えられています。
また、ビタミンD・カルシウム・骨強度について、成長期の中高生を5年間調査した結果、日常的にビタミンDとカルシウムの摂取が不足しているグループは、全体的に骨密度も低く、その後改善している人もほぼいないことがわかっています。調査開始時にはほとんどなかった骨密度の差は、5年後には大きな差となって現れました。少しでも若いうちから骨を意識した生活を心がけ、将来的に骨粗しょう症にならないようにするためにも、長いスパンで丈夫な骨づくりに取り組むことが重要です。
日本人の「魚離れ」は、
ビタミンD不足にも影響
ビタミンDは、小腸からのカルシウム吸収を高める役割があり、骨づくりには欠かせない栄養素です。ビタミンDの欠乏状態が長期間続くと、骨粗しょう症のリスクが高まります。とくに閉経後に骨密度が大幅に減少する女性にとっては、ビタミンDの重要度はより高くなると言えるでしょう。
魚はビタミンDを多く含みますが、毎日摂るのはなかなか難しい食品です。厚生労働省の調査によると、日本人の肉類・魚介類の摂取量比率は10年ほど前に逆転し、食の欧米化は進むばかり。現代人の「魚離れ」は年々顕著になっています。「子供が魚を好まない」「調理が面倒」「肉よりも値段が高い」などの理由で避けられがちな魚介類ですが、骨づくりに欠かせない栄養素を補うためにも、今まで以上に積極的に摂取することをおすすめします。
カルシウム強化は、
すべての年代にとっての課題
日本人のカルシウム摂取量は、全年代において日常的に不足していると言われています。年代別のカルシウム摂取量では、男女ともに学校給食で毎日牛乳を飲むことができる7~14歳がピークとなっています。この時期を過ぎると乳製品を摂る機会が一気に減り、それとともにカルシウムの摂取量も減少傾向に。どの年代も1日あたりの目標摂取量に届いていないのが現状です。
カルシウムを多く含む食品は、牛乳などの乳製品、小魚や干しエビ、ひじきなどの海藻類など。なかでも牛乳は吸収率が約40%と高いうえに一度にたくさん摂ることが可能なので、とても効率的な食材です。今からでも決して遅くはありません。できることを取り入れながら、足りないCa、D、K2摂取を意識した健康な骨づくりのための食生活を心がけましょう。
神戸学院大学 栄養学部栄養学科 教授 津川 尚子 氏
神戸薬科大学衛生化学研究室准教授、大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科公衆衛生学研究室教授を経て、2023年4月より神戸学院大学栄養学部栄養学科教授。成⾧期から高齢者におけるビタミンの栄養状態と骨の健康について研究している。