【骨のゴールデン・トライアングル】 推進プロジェクト

コツコツ健康「骨」コラムCOLUMN

骨粗しょう症リスクを
回避するために〜 臨床の現場から 〜

増え続ける骨粗しょう症患者

 骨粗しょう症は、骨の構造がスカスカになり、ちょっとしたことで骨折しやすくなる病気です。また、立ち上がったときや重いものを持ったときに背中や腰が痛んだり、歳をとって背中が曲がってきたりするのも、骨粗しょう症の症状のひとつです。

 日本人の骨粗しょう症患者数は、2015年時点で約1,300万人と言われており、高齢社会の進む中、患者数は今後も増加の一途をたどると予測されています。

 骨が弱くなっていないか、また骨粗しょう症の兆候がないかを簡単にチェックする方法としては、

  • [1] 身長低下チェック(身長が縮んでいないか)
  • [2] 姿勢チェック(壁に背をつけた時に頭が壁につくか)
  • [3] ウエストチェック(肋骨と骨盤との間に指2本が入るか)

などがありますので、ぜひ今の状態を確認してみてください。

大腿骨頸部骨折(患部のみ)

年代別の注意点

 丈夫な骨が維持できていないと、軽い転倒から骨折し思わぬ大けがに繋がる可能性もあります。骨粗しょう症で骨折しやすい部位は大腿骨頸部、椎体(背骨)、橈骨、上腕骨など。特に高齢者(80歳以上の男性、65歳以上の女性)は、足のつけ根の大腿骨頸部骨折を起こすと、そのまま要介護状態になるリスクが高くなります。さらに死亡のリスクが高まることも指摘されており、大腿骨頸部骨折後、約20%、つまり5人に1人は1年以内に死亡しているという報告もあります。

骨折しやすい部位

 また、子育てで忙しくしている母親世代(30~40代の女性)はつい自分の健康をおろそかにしがちなところがありますが、女性の骨粗しょう症の発生率は男性の約3倍。特に閉経後は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少により骨の代謝バランスが崩れ、骨粗しょう症リスクが急激に高まるため注意が必要です。お子さんだけでなく自分の骨づくりについても、今のうちから関心を持ってほしいと思います。そして、高校生以上の学生さんは学校給食がなくなるため、カルシウムの摂取量が急に減ってしまう傾向がありますので、ご家庭の献立もカルシウムを意識したものに見直してみるのも良いでしょう。

骨量の変化(概念図)

 50代以上の方も、遅すぎることはありません。毎日の食事や運動習慣を改善することで、骨量減少のカーブが緩やかになり、骨粗しょう症の予防になります。

栄養以外にも、適度な「運動」と
「日光浴」が丈夫な骨をつくる

 使わない筋肉が衰えるように、骨も負担をかけなければ強くなっていきません。骨を強くするには骨に圧迫力を加えることが一番。しかし、決して激しい運動をする必要はなく、散歩や軽いジョギングでも充分に効果が得られます。

 そしてもう一つ大切なのが、太陽に当たること。日光を浴びると体内でビタミンDが生成され、骨を強くしたり、風邪をひきにくくなったりなどの良い効果がたくさんあります。しかし近年は美白ブームによる紫外線カットや屋外に出ない生活スタイルが普及し、日光に当たる時間は減少傾向。ビタミンDは、肌の6平方センチメートルを3時間当てると、1日に必要な量が生成されると言われていますから、どこか体の一部でもよいので太陽に当たることをおすすめします。歳をとってから慌てるのではなく、今のうちから骨粗しょう症のリスクを軽減しておきましょう。

原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林 泰史

骨粗しょう症研究、老人医学の第一人者。骨密度、寿命と健康の関係などを長年にわたって調査・研究している。日本骨代謝学会、日本リウマチ学会指導医、日本リハビリ学会専門医、日本老年病学会指導医、及び各学会評議員、日本整形外科学会専門医等を務めてきたが、現在は日本リハビリ学界功労会員。

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