コツコツ健康「骨」コラムCOLUMN
コンビニ食材だけで、
骨づくりの一汁三菜
日本人の栄養不足はますます深刻化
健康志向が高まりをみせる中で、現在、多くの人が栄養不足に陥っていることをご存知ですか?
厚生労働省が毎年行う国民健康・栄養調査によると、ほとんどの世代において、カルシウムやビタミンDをはじめとする多くの栄養素が著しく不足しています。特に20代~40代は栄養素の多くで健康の維持・増進に必要とされる量を摂取できていません。
そして今、外出時間が減って運動不足になったり、日光に当たる機会が減っていると思う人は、さらに要注意。骨の栄養も不足していく可能性が考えられます。
いつの時代もさまざまなダイエット法が話題になりますが、特定の栄養素を避けるような情報は基本的に誤りであると言っても過言ではありません。なぜなら、栄養素とはヒトが生命活動を維持するために必要不可欠な成分だからです。5つの栄養素(糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル)のうち、どれか一つが不足しても健康の維持・増進は望めないのです。
しっかり栄養をとるには、
「主食+一汁三菜」
「主食+ 一汁三菜」は、主食に汁物とおかず3品(主菜:肉や魚等のたんぱく質食品、副菜、副々菜:野菜、豆類、海藻等)を組み合わせた、日本の伝統的な献立です。これまでの研究で、主食・主菜・副菜がそろった食事を1日2食以上食べることで、栄養素摂取量(たんぱく質、脂肪エネルギー比、ミネラル、ビタミン)が適正になることが報告されており、これを受け、健康の維持・増進を目的に策定された「健康日本21(第二次)」(厚生労働省)でも、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合の増加」が目標に掲げられています。
コンビニ食はアリ?ナシ?
育児世代(25~39歳)の女性の76%が有職など、現代は仕事や家事に忙しい人がとても増えています。このような状況下でも、日本にはいまだ“手作り神話”が根強く、コンビニやスーパーのお惣菜を買うことに罪悪感をおぼえる人も少なくありません。手作りの良さはもちろんありますが、食事作りで睡眠時間を削ったりストレスを溜めたりすれば、それこそ健康を損なうことにもなりかねません。健康のことを考えたら、「手作り」よりも「栄養を摂る」ことにこだわり、「何を選んで食べるか」をしっかり考えましょう。
最近のコンビニでは、お惣菜が薄味になるなど、健康を意識した商品が増えています。カット野菜については、家で野菜を切った場合と栄養面でほぼ遜色なく、家の冷蔵庫で2日間保存した野菜よりもビタミンCが多いと言われています。「栄養を摂る」ことをまず意識し、次いで産地や原材料などに自分なりの判断基準を持っていれば、どの商品を選べば良いかが見えてきます。
かしこく選ぼう!
コンビニ食材だけで一汁三菜
コンビニでも食材の選び方を考えれば、骨の健康に役立つ栄養バランスの良い食事を作ることができます。ここではコンビニ食材だけで完成する、骨づくりのための一汁三菜メニューをご紹介します。
コンビニ食材で栄養をしっかり摂るためには、汁物、おかず3品(主菜、副菜、副々菜)の区分を意識し、さらに色々な種類の食材を選ぶことがポイント。まず、骨の健康に役立つ栄養素「骨のゴールデン・トライアングル」(カルシウム、ビタミンD、ビタミンK)が豊富な食材を選びます。ビタミンDの供給源は主に魚類なので、和食、洋食ともに魚の缶詰を主菜に。和食では骨も食べられるサバ味噌煮缶にすることで、主菜でカルシウムも補給できます。洋食の主菜で選んだツナ缶にはカルシウムがあまり含まれていません。このため、カルシウムの補給にチーズを選び、汁物と副菜にトッピングをします。コンビニで選べるビタミンKが豊富な食材は、わかめ、ブロッコリー、葉物野菜で、汁物、主菜、副菜に取り入れます。また、ビタミンやミネラルの供給源となる野菜の推奨量が一日350g以上、1回の食事で117g以上であることもお忘れなく。コンビニには冷凍野菜、パック入り野菜、野菜を使ったお惣菜があるので、汁物や副菜、副々菜に簡単に取り入れられます。意外かもしれませんが野菜100%ジュースも“野菜”。国民健康・栄養調査ではその摂取量が野菜としてカウントされています。洋食で野菜量が多い理由は、“汁物”で粉末トマトスープの素を電子レンジで温めたトマトジュース150mlで溶いているからです。和食、洋食でも主食を“雑穀入り”にし、少量であっても栄養素をコツコツと積み上げていくことを心掛けましょう。
3食でうまく栄養バランスが整わないと感じた時には、「補食」で栄養を補うのもおすすめです。仕事場でもどのような栄養が足りていないかを考えて食べる習慣をつけましょう。
日本獣医生命科学大学 客員教授 栄養士 佐藤 秀美 氏
横浜国立大学卒業後、企業で調理機器の研究開発に従事。その後、お茶の水女子大学大学院修士・博士課程を修了。学術博士。専門は食物学。複数の大学で非常勤講師を務めるかたわら専門学校を卒業し、栄養士免許を取得。研究者と主婦の目線で料理や栄養を研究。著書多数。