コツコツ健康「骨」コラムCOLUMN
食生活の変化と
子供の骨づくり
母親世代の食生活の変化が現代っ子の食生活にも影響
近年、子供の骨折が増えています。保育園や学校で起きた骨折数の統計によると、40年前との比較で約2.5倍。食生活が豊かになったといわれている現代ですが、骨折リスクが高まっているのはなぜでしょうか。
2015年に厚生労働省が実施した国民健康栄養調査によると、若い世代ほど外食や中食(惣菜やコンビニ弁当などの調理済み食品を自宅で食べること)の利用割合が高く、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事ができている人が少ないことが明らかになりました。特に20〜30代の女性では、カルシウムや食物繊維などの摂取量が60歳以上に比べて全体的に少ない傾向にあります。また別の調査では、母親のカルシウム摂取量や運動強度は、その娘の骨密度にも影響を与えていることが判明しました。こうしたことから骨の丈夫さと「遺伝的素因+生活習慣」の重要性に注目が高まっているのです。
出典:林泰史編『図でみる骨粗鬆症2013(Osteoprosis Japan別冊)Osteoprosis Japan21(1)33-63(2013)』
先輩ママと現代ママ、
子育て意識の違い浮き彫りに
子供の成長において最も大切だと思うことを聞いた調査では、世代間での意識の違いも浮き彫りになりました。現在50〜60代の先輩ママ世代が「丈夫な体づくり」を重視していたのに対し、30〜40代の現代ママ世代は「学力」「コミュニケーション能力」などの“知性”を重視する傾向に。現代社会での問題などが、子育てにも反映されているのだろうと思われます。
また、食生活において子供に意識して摂らせている食材を聞いたところ、骨の材料となる「牛乳」と答えた人は20年前に比べて20%も減少していました。子供の頃の食生活は大人になっても影響を受けるため、小さい頃からカルシウムを含む食品の摂取を習慣にしておくことが大切です。
カルシウム以外の栄養素の認知・理解度はまだまだ不足
骨の材料となる「カルシウム」の重要性は、先輩ママ、現代ママともに8割の認知がある一方で、カルシウムを骨に吸着させやすくする「ビタミンD」や「ビタミンK2 」についての認知はまだまだ低いままです。ライフスタイルの変化でお母さんたちが忙しく過ごす現代ですが、栄養素入りの飲料やシリアルなどの食品を上手に組み合わせることで手軽に取り入れることができます。親が子供の食事の面倒をみてあげられるうちに、骨に大事な3つの栄養素(骨のゴールデン・トライアングル)の大切さを教えておけば、子供の将来にも大変役立つでしょう。そして骨に良い食事は母親世代にとっても閉経後の骨粗しょう症のリスクを減らすことにもつながりますので、今からでもぜひできることから始めてください。
原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林 泰史 氏
骨粗しょう症研究、老人医学の第一人者。骨密度、寿命と健康の関係などを長年にわたって調査・研究している。日本骨代謝学会、日本リウマチ学会指導医、日本リハビリ学会専門医、日本老年病学会指導医、及び各学会評議員、日本整形外科学会専門医等を務めてきたが、現在は日本リハビリ学界功労会員。